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2005年12月 4日 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

7日に小田急訴訟の最高裁判決、
原告適格の判断に注目


 小田急線の複々線化に伴う高架化事業を巡り、東京都世田谷区の沿線住民40人が騒音被害などを受けているとして、国を相手に事業認可の取り消しを求めた行政訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・町田顕長官)は7日に、原告の資格(原告適格)の有無を決める判決を言い渡す。

 今年4月に施行された改正行政事件訴訟法で、原告適格の範囲を拡大する趣旨の規定が新設されており、線路からどの程度離れた住民までを認めるのか、判断が注目される。

 原告らの住宅は、小田急線の高架化事業が進む喜多見―梅ヶ丘間(約6・4キロ)の線路沿いに点在している。巨大な高架が目と鼻の先にある人もいれば、1キロ以上離れた人も。工事はほぼ終わり、昨年暮れから複々線の運行も始まっているが、原告らは「騒音などに配慮して地下化するべきだ」として、事業認可の取り消しを求め続けている。

 こうした行政訴訟では、原告適格が認められて初めて実質審理に入ることができる。従来の最高裁判例は事業地の地権者にだけ原告適格を認めていたが、小田急訴訟の原告で高架化事業地の地権者は一人もいない。1審・東京地裁は、線路沿いの側道事業地を高架化事業地と一体とみなし、側道事業地の地権者9人の原告適格を認めたうえで事業認可も取り消したが、2審・東京高裁は全員の原告適格を否定し、訴えを退けた。

 しかし、最高裁が今回、原告適格の争点だけを大法廷に「論点回付」したことから、法改正の趣旨をくみ、判例変更の必要があると判断したとみられる。

 今回の判決が原告適格を広げる場合、その範囲は、〈1〉騒音などの被害を主張する住民〈2〉事業認可の際に都が実施した環境影響評価(環境アセスメント)の対象地域の住民〈3〉騒音被害の程度が一定水準を超えた住民――などが考えられる。

 本人の主張だけを判断材料にすれば、全員が原告適格を認められる。アセス対象地域なら、線路から最大約1キロの範囲となり、ほとんどの原告が認められる。被害の程度を考慮する場合は、基準となる騒音の数値が焦点となる。

 今回の判決で1人でも原告適格を得ることになれば、実質審理に入る。

(2005年12月4日15時6分 読売新聞)


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