Barrow
The most northern settlement in Alaska
9 月 6 日 (金曜日)
English Short Version
Alaska 最北端Point Barrow にて。
【注】2001年3月に再訪したら、立派な看板に替わっていました。
空港の建物も建て直されている等、町の様子で変わった点もありました。
- Anchorage の市内でも街灯だけが道を照らし、行き交う車も少ない早朝 、空港へ向かうタクシーの中
- 運転手「これからどこへ行くんだ」
- あおやま「Barrow へ観光に」
- 運転手「Barrow は寒いぞ」
- あおやま「このデイバックにトレーナー2枚とウインドブレーカー1枚が入っている」
- 運転手「Smart man.」
- あおやま「Yes, very smart.」
- 飛行機は Mt. McKinley の上を飛び越し、Mighty Yukon の流れを眼下に望んで、湖だらけの土地の上に来ました。ATLAS を見ても、北緯70゜以北では急に水面が増え、陸地と半々くらい、等高線もなくなって、地図は白青 2色になってしまいます。さらに面白いことには、あおやまの持っている ATLAS は140万分の一の地図で、上下は北緯68゜から72゜まで、左右は西経 152゜32'30" から 167゜00'までをカバーしていますが、その地図が明らかな台形であるばかりか、台形の上辺と下辺も弓なりになっています。地球のてっぺん、 "Top of the world" という気がします。
(Barrow 付近の地図 (XEROX))
- 0950。Barrow 市街地の西を回って、機は海上へ出ました。おぉ、北極海だ! 。まもなく着陸。滑走路が白い。
今日の予想最高気温は 2℃, 最低気温は -3℃ とのことでしたが、風がないから、シャツの上にトレーナーが1枚で十分です。飛行機後部のタラップを降り、平屋建バラックの空港ビル (?) を目指します。
ツアーのバス運転手兼ガイドが迎えに来てくれていました。バスは年代物の Ford で、椅子の背には赤, 青, 緑の厚手のコートが掛けられていました。今日の客はそれやこれやで 32 人。
- 1030。バス出発。ガイド「Good news!。昨日は曇っていて bear がいても見えないくらいだったが、今日は良さそうだ。」
- 1032。バスは走り出したと思ったらすぐに City Hall と Recreation Center のところで停まりました。隅のブランコに子供がいっぱい群がっていますが、他に人影がありません。建物の中ではバスケットが出来たりするそうですが。運転手が町の様子を色々説明してくれているうち、道の向こうから土埃を巻き上げながら路線バスが来ました。
運転手による Barrow の観光案内
- 1500年前から続く原住民の町だが、今は観光, 油田関係で生計を立てている人が多い。現在の人口は約3000。皆、天然ガスで暖房され、電気, 水道の完備された家に住んでいる。
それでも軒先にクマの毛皮を下げたり、庭先に鯨のヒゲを置いた家はときどき見かける。
- 5月10日〜 8月2日の 85日間は太陽が沈まず、11月18日〜 1月24日の 68日間は太陽が現われないので、この間は特に観光のハイ・シーズンになる。流氷が押し寄せているのは 6月中旬くらいまでだそうで、今は海は一面の灰色。(あおやまが訪れたこの時期は、特徴に乏しいことになる)
(夏の白夜は特に人気があるし、northern light (オーロラ) 見物は 1月がよい)
- 町内を走る定期バス路線が 3つあり、ホテル - 空港間等を結んでいる。朝から夜まで 20分毎運転の由。もっとも、2時間で walking tour が出来るくらいの町の広さ。
- この町へ外部から通じている道路はない。物資は飛行機, 船で運ばれてくる。冬は Prudhoe Bay (直線距離で 330km 東の、Alyeska Pipeline の起点で、Fairbanks 方面から通年通行可能な道路が通じている北極海沿岸唯一の町) から snow mobile で。この町を走っている車をどうやって運んできたか、聞いたのに忘れてしまいました ^^;。
- さらに High School, Visitor Center, 町の西端のツンドラの上に立てる箇所 (市で一番標高が高いところ) を通って、空港ビルで休憩、
- 1205。バスは町並をはずれて走っていきます。はじめのうちは、建物があったり、ゴミの landfill 場所があったりしましたが、やがて、人工的なものはなくなり、地図の上では東北方向へ突き出した砂嘴の先端を目指します。
- 1220。霧がかかって視界がかなり悪くなっており、単なる砂場の上と変わりません。
運転手がバス後部の扉を開け、「Pt. BARROW ALASKA」という看板を取り出し、「DANGER POLAR BEARS」の大看板の足下に立てかけました。これがなければ、ここがアメリカ大陸 (島以外)の 一番北とはわかりません。右手と正面にわずかに海面が見えますが、まだ前方に砂地が広がっています。この看板よりもまだ北があるというのに、端っこ趣味のあおやまとしては物足りませんでした。
運転手が客の一人々々からカメラを預かって、その看板を背景にシャッターを押してくれます。
- あおやま「How warm it is !」と言いながら Tシャツ 1枚で看板のところへ走っていく (このページ最初の写真)。
- 運転手「上は Tシャツなのに下は短パンじゃないのか」
- 他の客の一人「Hot じゃないのか」
Tシャツ 1枚で長時間耐えることもできませんが、風が弱いからそんなに寒くもありません。
- 1240。 Pt. Barrow 出発。往路を途中まで引き返し、砂嘴の付け根で左に折れて Naval Arctic Research Laboratory。片隅には bowhead whale (セミクジラ) の顎の骨が置いてありました。
鯨は人間を食べないかもしれませんが、立ってみると顎の中にすっぽりと入ってしまいます。さらに左に折れて赤黄茶色のツンドラの中を進みます。「昨日 bear がいたところだ」という箇所では polar fox が跳ねていました。
- 1331。天然ガスの pipe line と発電所。発電所といっても、地元の少ない人口を賄えればよいので、タンクがひとつに小さな建屋が数棟あるだけ。ガス臭い、爆発なんかしないのか、いやいや、人間の嗅覚は実際上問題ないほどの濃度のガスも嗅ぎ分けられるくらい結構鋭いからな、と日頃は役に立っていない化学の知識を総動員。臭い関連は人口密集地域なら必ず問題になりそうですけど。Pipe line も管がツンドラ上に置かれたドラム缶に紐で縛られて固定されているだけです。
- 1337。バスのエンジンがかからなくなりました。セルモーターは回るのですが。
- 運転手が前部に突き出たボンネットを開け、いろいろいじくり回しますが、事態は好転しません。
- バスに備え付けの無線電話で営業所に電話するが相手が出ません。運転手「みんな昼ごはん中だ。」客 (笑)。
- さらに客も加わって色々いじくり回すがやっぱり駄目。
- 運転手「No more tool.」 客 (笑)。
- 運転手「お客さんの携帯電話でホテルに電話しよう。Gas Well Road の 5 miles と言ってもらえればわかる。」 (Gas Well Road は約 12miles の道で、Barrow で一番長い道路)
- 1401。トラクタが荷台を牽いて現われました。運転手「町へ早く帰るつもりなら、これが来た。町へ行くけど、どうか?」客 (笑), 誰も乗りません。
- 運転手は入口のところに立って客の色々な質問に答えています。あおやまもどのくらいの頻度で polar bear が見えるか質問しましたが、答えを忘れてしまいました。流氷があるうちの方が確率が高いとのことでした。
- 運転手「そうだ、お客さん、どこから来たの?」
- 客1 (右前から順に) 「ドイツ」
- 客2「スイス」
- 運転手「国際的だな」
- 客 (笑)
- 客 (以下) 「アラバマ」「イリノイ」「オハイオ」「日本」「フロリダ」…
- 運転手「それにしてもこれは Alaska adventure だな」 客 (笑)
- 1438。大きなトラクタが来ました。運転手「ゆっくり町の方へ牽いていってもらう。一本道だから、そのうち rescue とすれ違うだろう。」 トラクターとバスの間に鎖を渡してゆっくり牽かれていきます。
- すぐに向こうから小さな motor coach が来たので、乗り換え。「21人までは座れるんだけどね。」あおやまは最後に乗り込み、屈んで前方を見つめて行くことにしました (やってることが鉄道に乗る時と同じぢゃないか ^_^;)。この姿勢で市街まで。
- 1520。Barrow 市街 の "TOP OF THE WORLD HOTEL" 前に帰り着きました。1時間強の昼食休憩。あおやまはごはんは後回しにして、絵葉書書きに専念。葉書を家の郵便受かと思うようなポストに放り込むが、これでも予定の宛先に着いたようでした。ごはんの方は食事処も色々揃っているけれど、特にどうというところはなかったようです。ホテルの隣はメキシコ料理 (!), 海岸通りをずっと行くと普通のハンバーガー屋…
- ホテルの前の道路を挟んで向こう側は海岸で、海底をならすのだという船が朝から行ったり来たりしています。写真を撮っていると、他の人達も集まってきました。
- 中のひとり (男) があおやまにビデオカメラを渡してきました。映してくれ、ということのようです。「これがズームで、こっちが望遠だ、試してみろ。」
- あおやま「沖の船と一緒にはうまく写らないと思うけど。」
- 男「そうじゃない。…」
- あおやま「わかった! もっと浜辺に寄って近くで写そう。」
- あおやまがビデオの録画のボタンを押し、彼の連れは別にカメラを構えたり、囃し立てたりする中を、彼は手早く上着もズボンもみんな脱ぎ、トランクス一丁で海の中へ駈けていきました。
- 流石に、海に一瞬飛び込んだだけで上がってきました。あおやまが望遠に切り替えてもっとよく撮ってやろうと意気込む間もなかったくらいでしたが、やんやの喝采。「Completely recorded !」とビデオカメラを彼に返しました。
- 1630。Native dance が始まりました。
- まず、セイウチの皮の上でトランポリンのように跳ねる 'blanket toss'。「いち、に〜の、さん!」でも小学生くらいの子供がうまく飛べなかったことがあるくらいで、難しいのでしょう。
- 海岸の特設テント内へ移動。さらにいくつかの踊りの紹介。女性と子供の優雅なものもあるし、若い男ばかりの勇壮なものもありました。客が飛び入りで参加して良いものもあって、私はやりませんでしたが、おばさんが何人か見よう見まねで手足を振っていました。主楽器は直径 1m くらいの木枠にセイウチの皮を張ったものを木の棒で叩くもののようです。
- それにしても、噂通り、彼らの顔つき、体形はあおやまが見ても日本人と区別が付きません。Native でない人に区別が付かないのは当然で、あおやまは Anchorage に戻ってからホテルへ帰るタクシーの中で、 native に間違えられました。
- 終わって、テント後方で民芸品の販売。あおやまはお土産は普段全く買わない方ですが、それでも何か買っていこうかと思いました。迷っているうちに狙いを付けていた caribou の頭の骨細工が仕舞われてしまったので、目標変更、手袋にしました。並べられているものはあおやまの手を入れるには小さい…、と、さっき勇壮な踊りを披露していたかっこいいオニイサンが「これなら入るんじゃない?」と大きなものを持ち出してきました。確かに好都合の大きさです。しかも、両手分が太い編み糸で結ばれているばかりか、その糸の中間同士も同じ太さの別の糸で結ばれているという頑丈な? 作りです。。オニイサン「使わないときは、こうして結んで、後ろに掛けておくといいょ。」あおやま「買った!」
- 1740。出発。海沿いに東進。Barrow の最も古い店, cafe のある海岸沿いの建物周辺へ行きます。
傍らには、鯨のヒゲでアーチが作られていました。
- 1800。空港へ戻りました。運転手と固い握手をして別れた (はずが…)。
- 1805。定刻なら、AS 85 が着くはずの時刻なのですが、飛行機がまだ着いていません。この便は Sept. 1 にあおやまが Seattle から Anchorage まで乗ってきた便のナレの果てですが、昨日も霧のために欠航したそうです。地上では、道路の数区画先がはっきり見えたり、すぐ向かい側の家も見えなかったり、といったガスのかかり方。
- 「AS 85 は霧のため上空で旋回中。」という案内。なるほど、頭上でジェット機の音はすれども姿は見えず。カウンター横のコーヒー (これはタダ) でも飲んで待つより他はありません。
- 1930。放送が流れてきました。「AS 85 は Fairbanks へ戻った。」しかたがない、一旦受け取っていた搭乗券を再びカウンターへ預けます。(Barrow 到着後、バスに乗った途端にガイド兼運転手が tour のvoucher を確認すると共に、復路の航空券も召し上げてしまったので、驚いたのですが、それに続く、第二のパンチ。搭乗券の引き取りに ID を示せ、というのですが、すぐ下に書いてあるような理由で、あおやまは Credit card 以外に名前の書いてある書類を持っていないのでした…)
客の誰かがツアーの会社 (さっきのホテル) へ電話してくれました。「迎えに来てくれるって。」
- あおやまは、それとは別に、翌朝早く Anchorage を立って帰国の予定なので、残っている人達に連絡を入れておこうとしましたが、皆不在です。
Passport, 帰国便の航空券 は、共に Anchorage の hotel の safety box に入っている上に、帰国便に接続するのは ANC 0730 発の AS92 のなので、これで次の便まで欠航になったら…、と顔には汗の縦筋 3本、ちびまる子ちゃん状態、頭の中では航空会社との談判の筋を懸命に作文し始めたのでした。しかも、天候が悪いのは航空会社のせいぢゃないし…
電話の方は、誰もつかまらないうちに quarter が尽きてしまいました。
- あおやまは合衆国は初めてなので、あまり確かめもせずに電話機に硬貨を入れてしまいました。
- 交換手「あんたが今入れたのは dime だ。」
- あおやま「(‾_‾# … 今度こそ、quarter だ)」
- 交換手「そう、それだ!」 などとやりとりしているうちに…
- 2030。今日一日私たちを案内してくれた運転手が夕飯を終えた顔で迎えに来てくれました。私たちが出た後、空港カウンターは閉鎖されてしまいました。
- さっきのホテルへ戻りました。ここの方がソファがあって暖かいだけ空港よりマシです。寒暖計は建物の入口にかかっているのですが、複数の針が別々の値を指しているから、今の気温はわからず仕舞い (一番高い温度を指していたものでも 30F 程度だったと記憶しています)。海を眺め、眺めるだけでは足りないので、出て写真を撮ったり、用を足したり (宿泊者以外使うな、と書いてあったように思うけれど、そんな仰せに従ってはいられません)、コーヒーを飲んだり (今度は、1杯あたり いくらかのお金を脇の瓶に入れないといけない ‾_‾;) します。ホテルのフロント (と言うんだろうな、あれでも) 正面のロビーの片隅には北極クマの剥製や民芸品が飾られていて、床には無造作に鯨のヒゲが何本も置かれていました。さらに絵葉書を買って、電話用の quarter を作りました。ホテルの電話からでは、800 番通話と Barrow 市内にしか繋がらなかったもので。
フロントとトイレの間に客室への通路があるのですが、その通路上方の壁に「これより先、アルコール飲料を持って入ることは禁止されている」というような注意書きがありました (細かい表現は違っていたかもしれない)。「へぇ、自分の部屋の中でも『禁酒』なのかしら」とちょっと意外に思いました (私が無知なだけ?)。
日本へ帰ってきてから、「アルコール飲料の販売、持ち込み、所持は市内 (in the community) では禁止されている」との情報に行き着きました。現地の人達の永年の慣習、なのかと思ったら、この禁酒条例は 1994 年冬に住民投票で制定されたものだと聞きました。冬の間中、家に閉じこもって alcohol を飲み、trouble を引き起こすといけない、という主旨だそうです。(なんと!)
私は酒好きなので、Barrow には住めない、ってことになるのかな。でも、「禁酒」について Alaska の 他の community ではどうか、ということは情報不足です (ご存じの方は教えていただけると幸いです)
- 2120。ようやく暗くなり、沖の船に灯がついた頃、水平線まで晴れてきました。夕日がまだ頭上に残っている雲に映えています。沈まない太陽の白夜でも、真っ暗な一日でもないから、Barrow の名物ではないけれど、こんな夕焼けは久しく見たことがありません。「この夕焼けを私たちに見せるために、神様はさっきの飛行機を欠航にしたのかしら。」
- 外に出て写真など撮っていると、ちょっと薄ら寒くなってきました。さっき native から買った手袋は流石に暖かい。嬉しがってポンポン手を叩いていると、皆寄ってきます。
- 「お、早速使ってるな、暖かいか?」
- 「試してみろ」
- 「なるほど。これを日本で使うのか?」
- 「うん、冬になったら」
- 「そうか、それはいいな。自分は Florida だから、買っても使い道がない ^^;」
この手袋が半年後の Chena, 1年半後の Greenland での夜の northern light 見物時になくてはならないものになる運命を、この時点では私も手袋も知る由はありませんでした。
- 2240。またまた、今日の運転手が迎えに来てくれ、ツンドラで立ち往生して以来の小さな motor coach に乗り込みます。客は 16 人になっていました。空港で、「今日は本当にいい adventure だった」 と運転手と今度こそ本当のお別れ。
- 2300。もう辛うじて道路向こうの家が望める他は誘導灯の灯くらいかしか見えない中、AS 147 が着陸してきました。折り返し AS 148 は 2330 過ぎ、外の景色は全く見えなくなった Barrow に別れを告げました。せめて northern light は見えないものかと帰りの機上で眠い目を擦っていましたが、残念ながら、それらしきものは見えず仕舞いでした。
- AS148 は時刻表の上では、BRW -> ANC は Non-stop flight ですが、欠航になった AS146 で FAI までの客がおり、その人達を下ろすために、復路でも FAI に着陸しました。もちろん、FAI から新しく乗ってくる客はいませんでした。下界は一面の暗闇ではなく、ポツリポツリ灯が見えているのが驚きでもありました。
Alaska Airlines VACATIONS の "WELCOME TO THE ARCTIC" なるパンフレットの一節には、わざわざこんなことまで書かれておりました。
Weather can occasionally affect the scheduled flights. If, due to weather or other uncontrollable reasons, you would have to spend an additional night, you would be responsible for your own hotel and meal costs. Alaska Airlines will not assume any additional expenses.
一般的にそういうものでしょうが。
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Last Modified : Apr. 8, 2001